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長崎県建築士事務所協会-会報投稿 対馬の石文化

2015/06/26 14:39:08

対馬の石文化

対馬は石と森でできた島、と言っても過言ではないだろう。島内には太古の堆積岩が多く露出しているが、建築物・工作物も石で造られたものが点在し、独特の技法・工法で造られている。その代表的なものが、厳原地区の石垣群、椎根地区の石屋根群、木坂地区の藻小屋である。


<厳原地区の石垣群>

鏡積みという独特の工法で積まれた石垣で、境界壁・防火壁として築造された。通常は高さ2m程度だが、防火壁は3m程度ある。 江戸時代にしばしば大火に見舞われた事から、その対策の一つ(延焼防止)として1841年以後築造された。
今日これら石垣は、自然崩壊、敷地の改造等により取り壊され激減した。しかし、まちづくり活動の中で保存すべきだという意見が多く聞かれ、現在は修復、新造、移築なども行われるようになった。

 


<椎根の石屋根群>

平柱工法で建築された小屋で、古来穀物を中心とした食料を保管するために使われてきた。平柱工法は、古民家にもみられ、島内に多く残存する。この工法で建築された理由は明確には伝わっていないが、豊富な森林資源があった事も一因であろう。 基本構造は、高床の平屋建てで、壁は板壁、屋根は石葺きである。ヒラバシラ、ヤネイタ(ジイシ)、スミイシ、メイシ、ムナヅケ等で構成され、柱は椎、その他は松を用いている。
屋根石は、島内に産する板状の島山石を用いて葺いている。石が利用された理由は、台風被害への対処、豊富な石材資源、また対馬藩が瓦の使用を禁止したとも言われている。
建て方の方法としては、図のように牛に引かせ、石を屋根にあげた例もあるらしいが、概ね40~50人程度(人力)で施工されていたらしい。 <木坂の藻小屋> 浜石を積み上げ屋根を葺いたものである。舟を操って藻を切ったり、漂着した寄り藻を乾かして、畑の肥料としたもので、この藻を貯える納屋が藻小屋である。 西海岸に多く存在していたが、現在はこの地区に復元されたものが残っているだけである。  対馬の生活と石とは密接に関わってきた長い歴史がある。現代の生活では失われつつある対馬の石文化の記憶を、これからも後世に残していきたいものである。

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